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1969.4.29〜5.10 [当時の「記録」]

この間10日以上に亘る。

女子寮の懐しい石倉さんの名が出た。合同委員会仲間でごく親しい同級生。その石倉さん、警官死亡事件関連で、岡山の街中、公衆の面前で逮捕され、新聞にデカデカとそのときの写真も出た。全くの誤認逮捕だったのだが、気持に一本筋金が入ってる石倉さん、なぜか黙秘権でがんばった。私が会ったのは何日か拘留されてようやく解放されたときのことだったのだろう。きっとそのころ、われわれの間では「時の人」になっていた。

現実の前での徒労。現実に直面して、それに抵抗しえない自分を見出した時、すべて徒労。》現実の前ではあっけなく雲散霧消してしまうようなことにいつまでも絡め取られてジタバタする、それはそれでくぐり抜けねばならない一時期だったのだろう。ここでも橋本さんに助けられた。私がどんな状態でいるのか、見透かしてのハガキだったのかもしれない。童話を書きたい》などと思ったのは、橋本さんのせいにちがいない。

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1971.5.5 高橋和巳の死 [当時の「記録」]

高橋和巳死亡記事.jpg

高橋和巳の死亡記事が挟まった2年後に跳ぶ。

『わが解体』のアマゾンレビュー★★1969年をピークとする大学紛争当時、作家であり京大で教鞭をとる立場にあった高橋が綴った自己反省の書とでもいうべきか。/とにかく高橋はまじめで誠実で良心的で、おまけに頭がいいから、目の前の混乱した状況を何とか順次立てて論理立てて懸命に説明しようとするのだが、読み手を納得させるだけの理屈が見つからない。その歯がゆさを誰よりも痛感しているのは高橋本人であるが、それでも必死に理屈を見つけ出し説明しようとする姿がますます痛々しく感じられる。/「内ゲバの論理はこえられるか」がその典型で、所詮やくざの出入りと同程度の内ゲバや集団リンチを、革命運動の中に普遍的摂理として位置づけようとするから行き詰まるのは目に見えている。最後の最後で高橋は「大衆的規模での意識革命」とか「人間関係変革」を持ち出さざるを得なくなっている。残念だが、総括になっていないし、第一青臭い。》ナイアル)マトを得た評と読んだ。

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1969.4.28 [当時の「記録」]

昨日「移ろうままに2」に、この「移ろうままに3」のことを書いた。そのせいで、おとといの47アクセスが、昨日は252アクセスになっている。カミングアウトで「人生全開」、そんな気分になった。もう人生そう長くはない、もったいぶってもしょうがない。
さてこのあたり、いろんな本を読みかじっている感じだが、どういう経緯か江藤淳の『作家は行動する』に行きあたった。《江藤はまさに4/25以前のおれを負の行動の論理として説明している!!》として二文をひき出している。
”「もの」たちの奥深くに埋没し、「自然」の中にわけ入ろうとする。そこへ「死」が出現したとき、たぶん悟達が達成される。”
”真の文体は現実に対する謙虚さ、ないしは他者に対するはたらきかけの意志によってしか生まれないのである。”
後者にはわざわざ右側に波線を引いている。自分だけで完結させようとしてジタバタする世界から脱け出て〈関係性〉に目覚めた、ということか。「大人になった」のだ。
この本のレビューに《「良い作家」とは…/作品を「見せる」のではなく、「おいでよ!」と作品の中に読者を「参加」させる作家であり、志賀直哉のようにリアリズムを履き違えず(?)、自然を見たら自身の言葉でそこに「ある」ものを描写し(自分の目に映ったものが真実なので、状態をまったくそのまま写実する必要はない)自然へ返すこと、そしてフィクションの「だまし」「うそ」「しかけ」を越えて、その先に真実を書き記すことの出来る者…。ミシマも、大江も、そして大岡さえもこれには完全にあてはまらない。/氏はとにかく、まっとうなことをまっとうなままに言っている/書いているに過ぎなく、そのまっとうすら満足に行えない作家がどれほど幅をきかせているか、ということなんである… 》(めそ ★2016.7.24)この感覚からすれば、三島(あるいは太宰も)は「拵えごとの世界」にすぎないということか。よくわかる気がする。
ともあれ、私はめでたく高橋和巳的世界から完全脱出を果したようだ。
その高橋和巳、この頃すでに病に侵されていたのだろう。自身、高橋和巳的感覚のまま「わが解体」を書き、京大助教授の職を辞し、2年後、1971.5.3没。誠実な人生を終えた。夫人の高橋たか子、その作品を追ったことはないが、高橋和巳の人生を引き受けつつ独自な世界を切り開いておられたようで、去年だったか山形新聞文芸欄でそのことを知って、以来気になっている。カトリックに入信、修道生活を送られたこともあるという。
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