1969.3.25〜3.28 [当時の「記録」]
一段落して詩めいたものが出てきてる。詩は、一義的には、つくるものではなくて、生まれるものだ。そうしてできたものを「詩」というんだろう。
寮誌があった。一年ごとに三寮合同でつくったものだ。橋本さんの名前がない。書いてないはずはない。橋本さん2回生の時の寮誌に、これだ!と思える三編の詩があった。ちょっと辛いが、敬意を込めて二編を写す。ペンネームは「真木千里」。
* * * * *
憧 憬
いつのまに
それは
習性となってしまったのか
ひそやかに
しのびこんできては
はたと困らせる
あなたへの憧憬
「あい」するというその思いを
ふと
わたし自身に確かめてみるとき
それはたちまち
形をかえて
限りない不安となってくる
「積極的に生きること」
わたしにはまだ遠い
けれども
そのたしかな思想の次元にいる
そして
みずからきびしさを強いる
あなたへの憧憬
泣いていたいような
よわいわたしの「あい」のなかへ
あなたの
「積極的に」が
どんなにきびしいものか
わたしにもそれがほしい
ほしくてならないのだけれど
いつのまに
それは
習性となってしまったのか
ひそやかに
しのびこんできては
はたと困らせる
あなたへの憧憬
「あい」するというその思いを
ふと
わたし自身に確かめてみるとき
それはたちまち
形をかえて
限りない不安となってくる
「積極的に生きること」
わたしにはまだ遠い
けれども
そのたしかな思想の次元にいる
そして
みずからきびしさを強いる
あなたへの憧憬
泣いていたいような
よわいわたしの「あい」のなかへ
あなたの
「積極的に」が
どんなにきびしいものか
わたしにもそれがほしい
ほしくてならないのだけれど
土曜日
雨はわたしのお兄さま
初夏にふる
美しく暖いその雨が
しっとりとした空気の中を
やさしく飛びやさしく逃げる
野いばらのしずくで潤った唇を
雨はわたしの口もとに近づけ
ほゝえむかと思えば
いつもの指先で
一度にわたしの体中にさわってみる
しなやかにたわんだ小枝の上に
花もおどれ
鳥もうたえ
雨はすべてを聖めてくれるだろう
涼しい
うの花がこぼれるあたりに
「朝」から夕暮れにかけて
雨はふる
ふりしきるばかりに
雨はふる
雨はわたしのお兄さま
初夏にふる
美しく暖いその雨が
しっとりとした空気の中を
やさしく飛びやさしく逃げる
野いばらのしずくで潤った唇を
雨はわたしの口もとに近づけ
ほゝえむかと思えば
いつもの指先で
一度にわたしの体中にさわってみる
しなやかにたわんだ小枝の上に
花もおどれ
鳥もうたえ
雨はすべてを聖めてくれるだろう
涼しい
うの花がこぼれるあたりに
「朝」から夕暮れにかけて
雨はふる
ふりしきるばかりに
雨はふる
* * * * *
「土曜日」はなまめかしく読んでしまったんだけど、橋本さん、それでいいですか?
《結局、おれ、根本的なところで橋本さんに最初から敗けてたんじゃあなかろうかって思う。おれが橋本さんに対する様な恋愛は、橋本さんはすでに経験ずみだったってこと。》
3/28の「善意」についての出来事は、何のことか思い出せない。
このあと、帰省。4/5、寮に戻るまで『記録』は空白。
《結局、おれ、根本的なところで橋本さんに最初から敗けてたんじゃあなかろうかって思う。おれが橋本さんに対する様な恋愛は、橋本さんはすでに経験ずみだったってこと。》
3/28の「善意」についての出来事は、何のことか思い出せない。
このあと、帰省。4/5、寮に戻るまで『記録』は空白。
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