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「四季」(’68寮祭文化祭三年演劇台本)(5) [劇台本「四季」]

B4一枚の【別刷】があった。この分、どこまでやったのかおぼえていない。

他愛のない話だが、公道に接して建っていた青桐寮(養護教員養成寮)へのストームが問題になったことがたしかにあった。そういえば近隣の家に謝りにまわったような気もする。齋藤孝氏いうごとく「祝祭の日々」だったといえばいえる。今の学生生活はどうだろうか。

*   *   *   *   *

第四景(その2)

【別刷】

川山  おれたちみんな一緒に委員会やったんだもんな。
佐藤  委員会といえば、ほらあのコンパのことおぼえているかい。太田さんがベロベロになって。
山口(旧姓太田) あら、私もう太田じゃないのよ。山口みち子です。どうぞよろしく。

 一同、”へぇー””そうか”など

村井  あの時は宮田と竹田で女子寮まで引きずってったんだろう。
一男  そんなことあったっけなあ。
山口  村井さん、私のことばっかり言って、あんたはどうだったの。手がつけられないほど暴れ出したのだれ。
村井  酒の話はよそう。どうもおれは相当な前科あるらしいから。

 一同笑い

後藤  寮でコンパっていったら、後がストームよね。覚えてる?川山さん、佐藤さん。私、お茶だしてあげたのよ。
川山  そうだったかなあ、・・・佐藤おぼえているかい。
佐藤  おぼえていないなあ。おれは水ぶっかけられたり、ほうきで追い回されたりした方がおぼえているよ。あんときは女ってつくづく恐ろしいって思ったよ。

 一同大笑い

一男  ストームかあ。
片平  私たち委員会の時、男子寮へストーム禁止令だしたのよね。
一男  そう、あの時かなあ、ストームのことで緊急寮生大会やったのは。
川山  数ある寮生大会でも、あの寮生大会だけは楽しかったよなあ。みんな真剣になって自分の考え述べてたし。
後藤  あのときは私たち迷惑したのよ。夜中のとんでもない時に道の真ん中でとんでもない声で騒ぎ出すんで、近所の人たち驚いて学校へ連絡して。私たちまで叱られたんだから。
一男  ん、おれと村井とで学校へ謝りに行って、その後、委員会みんなで女子寮の近所謝って歩いたんだっけなあ。
村井  あれからは、コンパのたびに前もって「今晩おそくにぎやかになるかもしれませんが、どうぞよろしくおねがいします」ってまわって歩いたんだぜ。
一男  なつかしいなあ。
片平  へえー、男子寮の人たちも苦労してたのね。
佐藤  女子寮じゃストーム禁止令だしたのはいいけど、だれもストームに来なくなったらこんどは淋しくなったんだろう。
山口  そんなことないわ。・・・でもちょっと、物足らなかったかな。
川山  そら、本音が出た。

 一同、大笑い。あや子、その拍子にお茶をこぼす。

【以上別刷】

あや子 あら、ごめんなさい。
一男  相変わらずだね。ちょっと待って。

 一男、雑巾を取りに行く。

一男  さあ、さあ。
あや子 私するわ。

 他の人たちはまだ話をつづける。
 一男とあや子、四つん這いになってお互い顔を見合わせる。一瞬、感情の交錯。

佐藤  さあ、そろそろ帰らなくちゃあ。

 だれともなく「そうね」の声など。

一男  もう帰るのか、せっかく来て。
後藤  ええ、ゆっくりしたいんだけど、みんな明日お仕事あるから。またおじゃまするわ。
山口  こんどは手紙のやり取りしましょうよ。

 みんな帰り支度にかかる。
 一男、次第にしょげてくる。
 それぞれ一男にはげましの言葉などかけて玄関を出る。
 ・・・・・
 しばらくして、あわてて玄関に駆け込む音。

あや子  ごめんなさい。忘れ物、忘れ物、手袋忘れちゃった。

 立って出てきた一男の視線とあや子の視線がぴったり合ってとまる。
 一男、苦しそうな表情の中から、

一男  あや子さん、僕と結婚してくれないか。

 あや子、唖然とする。
                 (暗転)

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